ディジタル信号処理の入門書を10年ぶりに読み返した
学生のときのディジタル信号処理の入門書を10年ぶりに読み返した。
学生のときはまったく理解できていなかったなとしみじみ思いつつ、読み直して思い出したこと、分かったことを列挙しておく(…どうせまた全部忘れるので)。
(こういうのを理解して使いこなしている人達ってすごいな…)
DTFT
- 時間ドメインと周波数ドメインの一方を離散化すると相手は周期化する。
- つまりDTFT では周波数ドメインが周期化する
- 連続信号のスペクトルとそのサンプリング信号のスペクトルの関係はよく知られている通り。
- この関係により、周波数ドメインがナイキスト周波数に収まっているとき(つまり有限のとき)、時間ドメインを離散化しても元のスペクトルの情報は失われない。これがサンプリング定理。
DFT
- DTFTから更に周波数ドメインも離散化すると、時間ドメイン(離散的)も周期化する。
- DFTは、計算上は有限個の離散値を扱うが、実際には時間ドメインも周波数ドメインも離散的かつ「周期的」であることを忘れてはいけない。
- (サンプリング定理と同じように…)時間ドメインが有限長のとき、周波数ドメインを離散化しても時間ドメインの情報は失われない(つまりDTFTをDFTで実行できる)。
エネルギー
- 「時間軸での二乗和(エネルギー)」と「パワースペクトルの積分」は定数倍の関係にある(パーセバルの関係式)。このことは、どの周波数にエネルギーが集中しているのか知ることができるということを意味する。この関係は、FTでもDTFTでもDFTでも成り立つ。
線形時不変システム (LTIシステム)
- LTIシステムの出力は、入力信号とインパルス応答の畳み込みで記述できる。これは連続システムでも離散システムでも同じ。
- 時間ドメインでの畳み込みは、フーリエ変換やDTFTのドメインにおける積である。つまりLTIシステムというのは、入力信号のスペクトルに、周波数特性(=インパルス応答のスペクトル)をかける操作を行う。
伝達関数
- ラプラス変換では、扱う信号がすべて因果的であるときに畳み込みの性質が成り立つ。つまり Y(s) = H(s)U(s) となり定数項はゼロとなる。つまり入力と出力の比 H(s)=Y(s)/U(s) が計算できる。H(s)を伝達関数と呼ぶ。(ちなみに過渡解析などでは、定数項が生じ、それが初期条件となる)
- ラプラス変換では虚数軸上の点が周波数特性を表し、z変換では単位円周上の点が周波数特性を表す。
- ラプラス変換では線形微分方程式システムの伝達関数が有理多項式であり、z変換では差分方程式システムの伝達関数が有理多項式である。
- ラプラス変換の有理多項式ではすべての極が負の側にあるときに安定、z変換の有理多項式ではすべての極が単位円周内にあるときに安定。
フィルタ
理想フィルタは因果的線形システムでは作れない。これをいかに近似するかを、フィルタの近似問題という。
FIR
直線位相かつ常に安定。しかし急峻さを得るには高い次数が必要。
- 窓関数法
- 理想フィルタを逆DTFTして得られる無限長インパルス応答を、適切な窓関数でぶった切って(周波数ドメインにスムージングがかかる)、時間方向に推移させる(周波数ドメインに直線位相が加算される)ことで、因果性信号にする。
IIR
低い次数で急峻な特性が得られる。しかし直線位相は近似的にしか目指せず、安定性も設計で考慮する必要がある。FIRより設計が難しい。
アナログフィルタを変換して作る方法は:
- インパルス不変法
- アナログフィルタの有理多項式による伝達関数を部分分数分解すると、各項の逆ラプラス変換は減衰する指数関数でなる。これをサンプリング (つまりtをnTで置換) したものをz変換する。
- この仕組み上、元のインパルス応答の周波数特性がナイキスト周波数に収まっている必要がある。つまりローパスフィルタとバンドパスフィルタにしか適用できない。
- 双一次変換法
- sとzとのあいだに双一次有理多項式による変換関係を定義して、ラプラス変換の有理多項式をz変換の有理多項式に変換する。